大阪府の最北端に位置する能勢町は、梅田から車で50分程度と気軽に行ける距離にありながら、四方を自然豊かな山に囲まれ気温が5℃ほど低く、大阪の避暑地として知られています。今回は、道の駅能勢(くりの郷)を起点に長谷の棚田の風景を堪能する、約12kmの周回コースをご紹介します。

今回のコースの起点は、買い物、食事、観光案内など能勢の魅力がぎゅっと詰まった能勢町観光物産センター 道の駅能勢(くりの郷)。大阪方面から能勢町に入ってすぐのあたりに位置してアクセスが良く、広い駐車場も完備。地元で穫れた新鮮な農産物を販売し、朝から賑わいをみせる能勢町イチの人気スポットです。この日は栗(銀寄)を目当てに、多くの方が開店前から並ばれていました。

栗が終われば、10月中旬からは黒枝豆の販売の季節。四季折々穫れる新鮮な農産物を目当てに、年間をとおして周辺都市からアクセスの多い能勢町観光物産センター 道の駅能勢(くりの郷)。この9月には、ソフトクリームに加え能勢の果物・野菜を使ったパフェやスムージーも販売するスイーツハウス「のせむすび茶屋」もオープンした。
全国的に有名な銀寄(ぎんよせ)は、栗の代表的な品種の一つで、能勢が発祥。9月下旬頃から収穫される銀寄の実は20〜25gと大ぶりで、 甘みがぎゅっと詰まった風味豊かな味わい。

開店直後の混雑を避けてゆっくり入ると、さすがに銀寄はすっかり売り切れていましたが、地元の素材を用いた食品が店内で所狭しと売られています。大阪近郊でこれほど活気のある道の駅も珍しいのではないでしょうか。

もっと買い物をしていたい気持ちを抑えて、サイクリングにスタートしました。国道沿いの道の駅を出発してすぐ、こんなに長閑な景色が広がります。

山のふもと沿いに走ると、道は適度にアップダウン。E-BIKEの電動アシストの恩恵を受け、自然の中を気持ちよく走ることができます。この坂を上り切ったらどんな景色が広がっているのだろう…そんなワクワクが連続します。

そうこうしているうちに、いつの間にか3kmほど走った様子。最初の立ち寄りスポット、慈眼寺(じげんじ)に到着しました。駐車場に自転車を置いてお邪魔すると、親切な女性が寺について色々教えてくださいました。

境内にある宝篋印塔は高さ206.7cmの七尺塔で、完全なものとしては能勢町内最大規模。背後の三草山山頂にあった旧清山寺から移されたと伝えられている。(塔の周囲が工事中だったため撮影せず。)

寺を抜けると、棚田の風景が本格的に見えてきます。地図アプリで長谷館跡というポイントがあるので急な坂を上ってみましたが、稲刈りを終えた田んぼがあるだけで、ほとんど何も確認できません。でも、情報を元に昔の様子に思いを馳せるのも、楽しいものです。高いところまで上ったおかげで、さっそく素敵な風景にも出会えました。

空堀と石積み跡の残る土塁が唯一の見学材料とされる、長谷館跡。能勢氏家臣団の一人、長谷景網の居館跡と言われている。大阪夏の陣では豊臣方として参戦したそう。
きつい坂があっても気軽に寄り道できるのも、E-BIKEだからこそ。写真では伝わりづらいがかなりの勾配。

山の中腹を貫く道を進むと、いよいよ棚田を直近に臨む場所に。農林水産省の日本の棚田百選にも認定されているここ「長谷の棚田」は、能勢を代表する風景のひとつです。この日は稲刈りを終えた景色でしたが、青い空を水面に映す田植えの頃や、青々と成長した稲が美しい夏の景色も秀逸です。

夏の棚田の風景。photo:能勢町提供

気になる神社を見つけていたので、パワフルな電動アシストに助けられながら、標高300mまで一気に上ってきました。脚力に自信がなくても行こうと思わせるE-BIKEの存在は偉大です。雲の間から差す太陽光が、ゆっくり動きながら棚田を照らします。

*こちらへは勾配の急な坂が続きますので、走行には十分ご注意ください。

気になっていたのは、少し山の中に入ったところにある八坂神社。自転車を下りて境内までは、長い石段が続きます。神木として保存・顕彰してきたシイの大木は府指定天然記念物にも指定されているので、余力があれば見学してみましょう。

田んぼの中を気の向くままに走りながら、徐々にランチの予約を入れている店の方へ向かいます。が、棚田の風景に癒されて、何度も止まっては写真を撮ったりと、なかなか先へ進めません。10月にも関わらず最高気温は30度近い日が続いていましたが、真夏と違いカラッとした空気で体感温度は涼しく、気持ちのいいサイクリング日和でした。

棚田の広がる能勢町の代表的な景色。大阪市内から車で1時間ほどの近さだが、里山を中心に豊かな生態系が維持されている。

今回のサイクリングの最大の目的は棚田の風景ですが、隠れた目的はこちら、窯で焼いたピッツァや能勢の恵みを戴けるイタリア料理店「grigio e ao(グリージョ・エ・アオ)」でのランチです。築70年を超える古民家をリノベーションし2017年にオープンした同店は、素朴な外観からは想像できない洗練された雰囲気で、厨房で存在感のある大きな窯にいたっては自分たちの手作りというこだわりよう。今回は、店内奥の靴を脱いで入る和を感じさせるテーブル席に案内していただきました。

季節のコースでは2種の前菜が提供され、そのどれもが素材のこだわりだけでなく視覚的にも愉しめる美しさ。

大きく開かれた窓からは、豊かな能勢の自然を存分に感じられます。この日は平日にも関わらず、店内は満席。ほとんどが予約で埋まっているので、サイクリングの途中で思い出して立ち寄るという利用は不可。しっかり事前予約し、目的地のひとつとして訪れたい店です。

思わず撮影したくなる料理の数々。店のFacebookInstagramでは日々、素敵な写真がUPされている。
テイクアウトもできるので、景色のいいとこへ自転車で移動していただいても良いかも。注:テイクアウトメニューは定期的に変わります。 Photo:grigio e ao

豊富な能勢の食材で季節を味わい、心身ともにリフレッシュ。サイクリングは後半へ。遅めのランチを堪能して走り出すと、少し陽が傾き心なしか夕方の空気感に。

棚田の風景をもう一度見たくなり、ランチの前に走った辺りへ向かいます。(記事最後のサイクリングマップでは割愛しています)

この風景に触れるだけでも、能勢を訪れる価値がある。そう確信するだけのインパクト、心に訴えかけてくるものがあります。仕事や学校、家の用事に追われて疲れた時に、思い出してぜひ訪れてみてください。その時は、風を感じられる自転車で巡るのが一番。草花や田畑の季節の香り、動物や虫たちの鳴き声。身に危険が及ばない範囲であれば、雨に降られるのも時には良いものです。

帰る前に、もう一度棚田を見にいこう。棚田の風景を目に焼きつけて帰ろう。そんなことを考えているうちに自然とリフレッシュできているので、能勢の里山ライドは多くの方にお勧めしたいんですよね。

この日は道端で、自然に木から落ちた大きな栗に何度も出会った。田んぼの匂いも懐かしい。虫の音は子どもの頃を思い出す。どこでも気軽に立ち止まって(または走りながらでも)五感で自然に触れられるのも、自転車の良いところ。
こちらは能勢町提供の宣材写真。自転車は写真を撮るのが好きな方にとっても、自分だけの美しい風景を自由に探し求めやすいのでお勧め。

能勢町には近年、都心部からの若い世代の移住や、こだわりの飲食店が移転してくる動きがあります。素敵な店などが町内の至るところに点在しているので、それらへの訪問を目的にサイクリングをするのも良いかもしれません。

今日はたくさん走りましたが、程よい疲れが心地よく感じられるほど満足感の大きなサイクリングに。それは訪れた風景に加え、ちょうど良い気候だったのと、パワフルにアシストしてくれるE-BIKEというのも大きな理由です。

E-BIKEだと楽すぎて運動にならない気もするが、足腰に余計な負荷をかけずに効果的な有酸素運動をするには自転車が一番。加えて、膝を90度以上に曲げる行為自体も、身体にはとても良い運動になる。

この道を行けば、サイクリングは間もなく終点。このあと、道の駅で買い物をして帰りました。

汗をかかなくなるこれからが、本格的な自転車のシーズンです。

今回巡ったコースはこちら。

長谷棚田12kmkmコース サイクリングマップ

 

*撮影協力
 能勢町観光物産センター 道の駅能勢(くりの郷)
 能勢町観光協会 / のせNOTE 能勢町の観光と物産
 慈眼寺
 grigio e ao

*使用車体
 Tern / HSD P9

*この記事で紹介している情報は、2021年10月時点の取材に基づいています。
*田畑への立ち入り、集落、路地への身勝手な侵入など、地域の方に迷惑のかからないようにサイクリングをお楽しみください。
*株式会社アキボウではCSR活動の一環として、産業(観光業)の活性化を目的に能勢町を中心としたサイクリングMAPの制作、情報発信に取り組んでいます。